出版の進め方:届ける
電子書籍の著者プロフィールの書き方:肩書きより「何を語る人か」を伝える
電子書籍を出すとき、意外と手が止まるのが著者プロフィールです。経歴を並べるだけだと自己紹介の羅列になり、読者の記憶に残りません。この記事では、プロフィールを「その本の信頼を支える一枚の説明」として書くための考え方と手順を、私の考えとして整理します。
結論:プロフィールは「この本をなぜあなたが書くのか」に答える文章
私は、プロフィールを自慢の場所ではなく、読者の小さな疑問に答える場所だと考えています。読者がプロフィールを見るとき、頭の中にあるのは次の問いです。
- この人は、何について語る人なのか
- この本の内容を、信頼してよい根拠はあるのか
- 読み終えたあと、この人にどこで会えるのか
この3つに、短く正直に答えられていれば、プロフィールは十分に役目を果たします。
肩書きだけでは伝わらない理由
「経営コンサルタント」「コーチ」「マーケター」といった肩書きは、情報としては正しくても、読者には中身が見えません。同じ肩書きの人はたくさんいるからです。
肩書きのあとに、「どんな人の、どんな悩みに、どう向き合っているか」を一文足すだけで、印象は大きく変わります。
| 肩書きだけ | 一文足した例(仮の例です) |
|---|---|
| 経営コンサルタント | 小さな会社の経営者が、自社の強みを言葉にする手伝いをしています |
| 料理研究家 | 忙しい家庭が、無理なく続けられる食事づくりを考えています |
| 元会社員のライター | 会社員としての経験をもとに、働き方の迷いについて書いています |
※上の表の文章は、書き方を示すための仮の例です。実在の誰かの経歴ではありません。
プロフィールに入れる4つの要素
私は、プロフィールを次の4つの要素で組み立てることをおすすめします。
要素① 何を語る人か
本のテーマと、あなたの関わりを一文で書きます。「誰の、何のお手伝いをしているか」が入っていると伝わりやすくなります。
要素② 語る根拠
経歴、資格、年数、取り組みなど、本の内容を語る根拠を書きます。ここで大切なのは、本当にあることだけを書くことです。盛った数字や、確認できない実績は、読者の信頼をむしろ損ねます。
要素③ 人柄がわかる一文
大切にしている考え方や、取り組む姿勢を一文だけ入れます。読者は、情報だけでなく「どんな人か」も見ています。
要素④ 次の接点
読み終えた人が、あなたの発信に触れられる場所を示します。自分のメディア、note、公式サイトなどです。電子書籍の中では、URLはリンクにしておくと読者が迷いません。
長さ別の書き方
プロフィールは、置き場所によって適した長さが変わります。1つの長いプロフィールを作り、そこから短く削る形にすると、あとが楽です。
| 長さ | 使う場所の例 | 入れるもの |
|---|---|---|
| 1〜2文 | 本の紹介文の末尾、SNSの自己紹介 | 要素①と④ |
| 100〜150字 | 著者ページ、本文中の著者紹介 | 要素①〜③ |
| 400〜600字 | 自社メディアの著者紹介ページ | 要素①〜④をていねいに |
弱いプロフィールと、伝わるプロフィールの違い
次の2つは、どちらも架空の例です。同じ人物が書いたと仮定して、違いを見てみます。
弱くなりやすい例(仮の例です)
「ウェブ集客の仕事を長くしています。さまざまな業種を担当し、多くの経験を積んできました。ぜひお気軽にご相談ください。」
伝わりやすくなる例(仮の例です)
「ウェブ集客の仕事をしています。小さなお店や会社が、自分たちの良さを、初めて知る人に伝わる言葉にする手伝いが中心です。この本では、案内文を書く前に整えておきたい情報を、順番にまとめました。」
違いは3つあります。
- 「誰の、何のお手伝いか」が書かれている
- 「多くの経験」のような、確かめようのない言い方を使っていない
- この本とのつながりが書かれている
ここで気をつけたいのは、「伝わりやすくなる例」の中身も、書き手が実際に取り組んでいることでなければ意味がない、という点です。書き方を整えることと、事実を足すことは、別のことです。
置き場所ごとの考え方
同じ人物でも、置き場所によって、読者が知りたいことは少しずつ違います。
| 置き場所 | 読者が見ているもの | 意識すること |
|---|---|---|
| 本の中(巻末や冒頭) | この本を最後まで読んでくれた人の関心 | 次の接点(リンク)をはっきり示す |
| Amazonの著者ページなど | 買うかどうかを迷っている人の目 | 短く、何を語る人かがすぐ分かるようにする |
| 自分のメディアの紹介ページ | 名前で調べてきた人の関心 | 根拠と人柄まで、ていねいに書く |
| SNSの自己紹介 | 流れてきた投稿を見た人の第一印象 | 1〜2文で、何を発信している人かを伝える |
置き場所ごとに別の人物を作る必要はありません。中心となる一文(何を語る人か)を共通にして、その周りの情報の量を変えるイメージです。名前の表記や肩書きも、場所によってゆれないようにそろえておくと、同じ人物の情報として読者に伝わりやすくなります。
書く前に答えておきたい、8つの問い
いきなり文章にしようとすると、手が止まります。次の問いに、箇条書きで答えてみてください。答えは、プロフィールに全部入れる必要はありません。材料として並べておくだけで大丈夫です。
- この本のテーマに、いつから、どんな形で関わっているか
- 読者として想像している人は、どんな悩みを持っているか
- その悩みに対して、自分がしてきたこと・調べてきたことは何か
- 本に書いたことのうち、特に大切にしている考え方は何か
- 資格や経歴のうち、本のテーマに関係するものはどれか
- 読者に、読後にどこで会えるようにしたいか
- 書いてはいけないこと(確認できない数字、他人の評価など)は何か
- 名前や顔、所在地などのうち、公開したくないことは何か
8番は、とくに大切です。公開する範囲は、書き始める前に自分で決めておきます。あとから気づくと、すでに公開された情報を戻せないことがあるからです。
書きにくいときの考え方
実績が少なくて、書くことがないとき
実績が少ないときは、「何をしてきたか」より、「何を考えて、何に取り組んでいるか」を中心にします。学んでいる途中であれば、「学んでいる途中の人が、整理して書いた本です」と、そのまま書くほうが誠実です。読者は、できるふりをしている人より、できることとできないことを言える人を信頼しやすいと私は考えています。
肩書きがいくつもあるとき
複数の仕事をしている場合は、この本のテーマに関係する順に並べます。関係のないものは、短くまとめるか、思い切って省いても構いません。全部を伝えようとするほど、一番伝えたいことが薄くなります。
他の人に書いてもらうとき
他の人にプロフィールを書いてもらう場合は、必ず本人が読んで、事実と違うところ、言い過ぎているところを直してください。第三者の言葉は、立派に聞こえやすい反面、本人が確認できない内容が混ざりやすくなります。
プロフィールを見直すタイミング
プロフィールは、一度書いたら終わりではありません。次のようなときに、見直します。
- 新しい本を出したとき
- 発信の場所(メディア、SNSなど)が変わったとき
- 取り組んでいる内容が、大きく変わったとき
- 数字や肩書きなど、事実が変わったとき
半年に一度でも、読み返して、いまの自分に合っているかを確かめると、古い情報が残りにくくなります。
書くときの注意点
- 実績や数字は、確認できるものだけを書く
- 「必ず成果が出る」のような保証の表現は使わない
- 経歴を時系列で並べすぎず、本のテーマに関係することを優先する
- 他の人の言葉や評価を、無断で載せない
- 本の内容が変わったら、プロフィールも見直す
プロフィールを書く手順
- 本のテーマを一文で書く
- そのテーマに、自分がどう関わっているかを書き出す
- 根拠になる事実だけを選ぶ
- 4つの要素を組み合わせて、長いプロフィールを書く
- 声に出して読み、言い過ぎている部分を削る
- 場所に合わせて、短いバージョンを作る
確認チェックリスト
- 何について語る人か、一文で言えるか
- 書いた内容に、事実でないことは含まれていないか
- 保証や誇張の表現は使っていないか
- 読み終えた人が行ける場所(リンク)が入っているか
- 短いバージョンと長いバージョンの両方があるか
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よくある質問
実績が少なくても、プロフィールは書けますか?
書けます。実績の大きさではなく、「何について、どんな姿勢で書いているか」を正直に書くことが大切です。実績がない部分を無理に飾る必要はありません。
顔写真や本名は出したほうがいいですか?
出す・出さないは、あなたの目的と安心できる範囲で決めてください。名前や顔を出す場合は、読者が安心できる反面、公開される範囲も考えておく必要があります。
プロフィールは、あとから直せますか?
直せる場合が多いですが、サービスごとに方法や反映の時間が異なります。公式のヘルプで確認してください。
複数の肩書きがある場合は、全部書きますか?
本のテーマに関係するものを優先してください。すべてを並べると、何を語る人かがぼやけます。
まとめ
- プロフィールは「この本をなぜあなたが書くのか」に答える文章
- 肩書きのあとに、一文足して中身を見せる
- 4つの要素(何を語る人か・根拠・人柄・次の接点)で組み立てる
- 事実だけを書き、誇張や保証は避ける
- 長いバージョンから、短いバージョンを作る
プロフィールに迷ったら、まず「読者は何を知りたくて、ここを見るのか」に戻ってみてください。