出版の進め方:届ける
電子書籍の紹介文(商品説明)の書き方:誇張せずに、中身を伝える5つの要素
電子書籍の原稿が書き上がると、最後に大きな壁が来ます。紹介文(商品説明)です。本の中身は自信があっても、数行で伝えようとすると、急に言葉が出なくなります。この記事では、誇張や保証に頼らずに、中身を伝える紹介文の書き方を、私の考えとして整理します。
結論:紹介文は「この本は自分向けか」を、読者が判断できる文章
先に結論です。私は、紹介文を、買ってもらうための宣伝文というより、読者が「自分に合う本か」を判断するための説明として書くことをおすすめしています。
読者が、紹介文を読みながら確かめたいのは、次の点です。
- 自分のための本か
- 読むと、何が分かるのか
- どこまでが書いてあり、何は書いていないのか
- 誰が書いているのか
この4つに答えていれば、派手な言葉がなくても、紹介文として十分に役目を果たします。
紹介文に入れる5つの要素
要素① 誰のための本か
最初に、読んでほしい人を、場面で書きます。「個人事業主の方へ」のような属性だけでなく、「自分の仕事を知ってもらう方法に迷っている方へ」のように、状況が見える言葉にすると、読者は自分に関係があるかを判断しやすくなります。
要素② 何が分かるか
読み終えたとき、読者が何を分かるようになるのかを、具体的に書きます。企画の段階で決めた、本の「約束」を、そのまま言葉にします。
要素③ 範囲(何を扱い、何を扱わないか)
範囲を示すことも、親切な説明です。「入門の内容です」「個人で出す場合を想定しています」など、扱う範囲を書いておくと、期待とのずれを減らせます。ずれが少ないほど、読後の印象も安定します。
要素④ 目次の紹介
目次の主な項目を、紹介文の中で示す方法があります。読者は、目次を見て、中身を具体的に想像できます。数字(「全8章」など)を書くときは、実際の本の内容と、必ず一致させます。
要素⑤ 著者情報
誰が書いている本なのかを、短く書きます。何についての仕事をしているか、という事実を中心にします。確認できない実績や、他人の評価を載せるのは避けます。
紹介文の組み立て例(仮の例です)
次の例は、書き方を示すための架空のものです。実在の本ではありません。
弱くなりやすい例(仮)
「この一冊で、あなたの集客は劇的に変わります。今すぐ読んで、成功をつかみましょう!」
伝わりやすくなる例(仮)
「自分の仕事を知ってもらう方法に迷っている、個人事業主の方に向けた入門書です。案内文を書く前に整えておきたい情報を、順番にまとめました。専門用語は、初めて出てくるところで説明しています。個別の業種に特化した内容ではなく、考え方の土台を扱います。」
違いは、次の3点です。
- 誰のための本かが、場面で書かれている
- 何が分かるかが、具体的に書かれている
- 範囲が示され、過度な約束をしていない
タイトル・サブタイトル・紹介文の役割分担
本の情報は、タイトル、サブタイトル、紹介文に分かれて表示されることが一般的です。それぞれに役割を決めると、同じことを重ねずに済みます。表示のされ方や入力できる項目は、配信先によって異なるため、登録画面で確認してください。
| 項目 | 役割(考え方の例) |
|---|---|
| タイトル | 何についての本かを、短く示す |
| サブタイトル | 読者が得るもの、対象、範囲を補う |
| 紹介文 | 判断のための、具体的な説明を書く |
タイトルやサブタイトルで言い切れなかったことを、紹介文に書く、という分担です。紹介文の最初の数行が、タイトルの繰り返しになっていないかも確かめます。
紹介文の構成を、順番に見る(仮の例です)
先ほどの短い例を、5つの要素の順に並べると、次のような構成になります。これも架空の例です。
| 順番 | 要素 | 書く内容(仮) |
|---|---|---|
| 1 | 誰のためか | 自分の仕事を知ってもらう方法に迷っている、個人事業主の方へ |
| 2 | 何が分かるか | 案内文を書く前に整える情報を、順番に理解できる |
| 3 | 範囲 | 考え方の土台を扱う。特定の業種の細かな手順は扱わない |
| 4 | 目次 | 読む人の迷いの順に、全4章で構成 |
| 5 | 著者情報 | 発行者と、書き手が取り組んでいるテーマを一行で |
これを順番に文章にすると、数行から十数行の紹介文になります。長さは、配信先の条件の範囲内で、読者が判断できる分だけにします。長ければよいわけではありません。
避けたい表現
紹介文には、避けたい書き方があります。短期的な印象は強くても、読者の信頼を損ねやすいものです。
| 避けたい表現(例) | 理由 | 書き換えの方向 |
|---|---|---|
| 「必ず成果が出る」「誰でも成功」 | 保証はできない | 読者が試せること、分かることを書く |
| 「圧倒的」「日本一」など | 根拠を示せない | 根拠がなければ使わない。事実で書く |
| 「多くの人が絶賛」 | 確認できなければ事実でない | 実在の声を、確認のうえで載せる |
| 「今だけ」「限定」で急かす | 読者を焦らせる | 本の中身を落ち着いて説明する |
| 他の本や人を、悪く言う | 信頼を損ねる | 自分の本の範囲を説明する |
読者の声や実績を載せる場合は、実在することを確認し、書いた人の許可や配信先のルールを確かめてください。実在しない声や数字は、載せません。口コミとの向き合い方は、電子書籍の口コミ・評判との向き合い方でも整理しています。
書き出しの工夫
紹介文の最初の数行は、読者の目に最初に触れる部分です。書き出しは、次のどれかを軸にすると、書きやすくなります。
- 読者の迷いから始める(「〜で迷っていませんか」ではなく、具体的な状況を書く)
- 本の約束から始める(「この本は、〜が分かる入門書です」)
- 問いから始める(読者が持っていそうな疑問を、一つ置く)
「〜でお悩みではありませんか?」という呼びかけを何度も使うと、定型的に見えることがあります。状況を具体的に書くほうが、読者に伝わりやすいと私は考えています。
紹介文と本文のずれを防ぐ
紹介文で約束したことが、本文に書かれていないと、読後の失望につながります。次の確認をおすすめします。
- 紹介文に書いた「分かること」を、一つずつ取り出す
- 本文の、どの章・どの見出しで答えているかを対応させる
- 対応する箇所がない約束は、紹介文から外すか、本文を補う
また、本文を直したあとは、紹介文も見直します。書き終えてから、問いが変わっていた、という場合は、現在の内容に合わせて紹介文を整えます。
書いたあとに、読み比べる
紹介文は、一度書いて終わりにせず、少し時間をおいて、次の3つの立場で読み返してみてください。
- 初めて見る読者として:専門用語が、説明なしに出てきていないか。誰のための本か、すぐ分かるか
- 疑い深い読者として:根拠のない言い切りや、大げさな表現がないか。確認できないことを書いていないか
- 書き手として:本文で答えていない約束が、混ざっていないか
三つ目の「書き手として」は、特に見落としやすい視点です。書き上げた直後は、本文に書いたつもりになっているため、紹介文との差に気づきにくいからです。時間をおくか、誰かに読んでもらうと、気づきやすくなります。読んでもらうときは、よいところだけでなく、「分かりにくいところ」を教えてほしい、と頼むと、改善につながります。
紹介文を書く手順
- 本の約束を、一文で書く
- 想定する読者を、場面で書く
- 扱う範囲と、扱わない範囲を書く
- 目次の主な項目を並べる
- 5つの要素を、順番に文章にする
- 避けたい表現が入っていないか、読み返す
- 本文と照らし合わせて、ずれがないか確かめる
- 配信先の文字数や書式の条件を確認して、整える
確認チェックリスト
- 誰のための本かが、場面で書かれているか
- 読んだら何が分かるかを、具体的に書いたか
- 扱う範囲を示しているか
- 目次の数字や項目が、本文と一致しているか
- 保証や、「必ず」「絶対」の表現を使っていないか
- 確認できない実績や声を、載せていないか
- 本文と、紹介文にずれがないか
- 配信先の条件(文字数・書式)を確認したか
次に読む記事
- 電子書籍の企画の立て方:本の約束を決める
- 電子書籍の目次・章立ての作り方:読者の迷いの順で組み立てる
- 電子書籍の著者プロフィールの書き方:何を語る人かを伝える
- KDP登録手順:紹介文を入力する画面までの流れ
よくある質問
紹介文は、何文字くらいが適切ですか?
配信先に文字数の条件がある場合は、その範囲で整えます。条件の範囲内で、読者が判断できるだけの情報を過不足なく入れることが大切です。最新の条件は、配信先のヘルプで確認してください。
目次を、紹介文に入れてもよいですか?
入れる方法はあります。表示のされ方や書式は、配信先によって異なるため、登録する画面で確認してください。
感想や評判を、紹介文に載せてもいいですか?
実在の声で、書いた人の許可や、配信先のルールが確認できる場合に限ります。確認できない声や、実在しない声は載せないでください。
書き直したくなったら、いつでも直せますか?
配信先によって、変更の方法や、反映までの時間が異なります。公式のヘルプで確認してください。
まとめ
- 紹介文は、読者が「自分に合う本か」を判断するための説明
- 誰のためか・何が分かるか・範囲・目次・著者情報の5つを入れる
- 保証や誇張に頼らず、事実と範囲で書く
- 本文とのずれを、公開前に確かめる
まず、本の約束を一文だけ、声に出して言ってみてください。