出版の進め方:つくる
電子書籍の目次・章立ての作り方:読者の迷いの順番で組み立てる6ステップ
企画が決まっても、原稿に入る前にもう一つ、手が止まりやすい場所があります。目次・章立てです。書きたいことは頭の中にあるのに、どの順番で並べればよいのか分からない。この記事では、章立てを「読者の迷いの順番」で組み立てる方法を、私の考えとして6つのステップに整理します。
結論:章立ては「書く順」ではなく「読者が迷う順」に並べる
先に結論です。私は、章立てを、自分が書きやすい順や、知識の大きさの順ではなく、読者が迷う順番で並べることをおすすめしています。
読者は、本を読むとき、頭の中に次のような疑問を持っています。
- これは、自分に関係のある本なのか
- 読んだら、何が分かるのか
- まず、何から始めればよいのか
- 途中で迷ったら、どう考えればよいのか
この疑問に、出てくる順に答えていくと、自然な章立てになります。反対に、書き手の整理の順に並べると、読者が置いていかれることがあります。
目次が果たす、3つの役割
目次は、ただの一覧ではありません。電子書籍では、特に次の3つの役割があります。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 購入前の確認 | 読む人が、この本で何が分かるのかを、先に見て判断できる |
| 読み進める道しるべ | 今、全体のどこを読んでいるのかが分かる |
| 読み返しの入口 | あとで、必要な箇所だけをすぐ探せる |
電子書籍では、目次の項目から該当の見出しへ移動できるリンクがあると、読み返しが楽になります。目次から移動できるかどうかは、制作の方法や配信の設定によって変わります。作る前に、使う方法で確認してください。
章立てを組み立てる6ステップ
ステップ① 読者の迷いを、付箋に書き出す
最初に、章のことは考えず、読者が迷いそうなことを、思いつくだけ書き出します。
- 始める前の不安
- 用語の意味が分からない
- どれを選べばよいか分からない
- やってみたが、うまくいかない
実際に受けた質問があれば、それも材料になります。材料がないときは、想像で書き出して、「想定」であることを自分の中で区別しておきます。
ステップ② 似た迷いを、まとめる
書き出したものを、似たものどうしでまとめます。名前を付けるなら、「始める前」「選ぶとき」「進めるとき」「行き詰まったとき」のように、読者の状況で呼べるものがよいです。
ステップ③ 並べ替えて、一本の流れにする
まとまりを、読者が経験する順番に並べます。目安は次のとおりです。
- 全体像・考え方(なぜ、これが必要か)
- 準備・前提(始める前に決めること)
- 実際の手順(何を、どの順にやるか)
- 迷ったとき・失敗したとき
- 続けるとき・次の一歩
テーマによって、順番は変わります。大切なのは、「この章を読む前の読者は、どんな状態か」を、各章で言えることです。
ステップ④ 各章に「約束」を一文で書く
各章について、「この章を読み終えると、読者は何が分かるのか」を一文で書きます。企画の段階で決めた、本全体の約束を、章ごとに小さくしたものです。
| 章のタイトル(仮の例) | 章の約束(仮の例) |
|---|---|
| 第1章 全体像 | 全体の流れと、各章の役割が分かる |
| 第2章 準備 | 始める前に決める3つのことが分かる |
| 第3章 手順 | 最初の一歩を、迷わず始められる |
約束が一文で書けない章は、まだ内容が整理されていません。その章は、分けるか、削るかを検討します。
ステップ⑤ 章の数と長さを決める
章の数に、決まった正解はありません。ただ、考え方の目安はあります。
- 読者が一度に覚えられる数を超えない(多くなりすぎるなら、大きなまとまりで束ねる)
- 章ごとの長さを、大きくそろえすぎない(ただし、極端に偏らないようにする)
- 1つの章で、約束は1つにする
スマホで読む人が多いことも考えて、一つの章が長くなりすぎるときは、小見出しで区切って、読む途中で戻りやすくします。
ステップ⑥ 目次だけを読んで、確かめる
最後に、本文を書く前に、目次だけを上から読んでみます。次の点を確認します。
- 読者の迷いの順番になっているか
- 章どうしのつながりが、自然か
- 同じ内容が、別の章に重なっていないか
- 見出しだけで、中身が想像できるか
声に出して読むと、流れの不自然さに気づきやすくなります。
章立ての例(仮の例です)
実際の本ではなく、考え方を示すための架空の例です。「自分の仕事を知ってもらうための入門書」を想定しています。
| 章 | タイトル(仮) | 読者の状態 | 章の約束(仮) |
|---|---|---|---|
| はじめに | この本の使い方 | 自分向けか迷っている | 誰のための本か、どう読むかが分かる |
| 第1章 | なぜ「伝え方」から考えるのか | 何から手をつけるか分からない | 全体像と、考える順番が分かる |
| 第2章 | 読む人を具体的にする | 誰に向けるか決められない | 読む人を場面で言葉にできる |
| 第3章 | 案内文を書く前に整える情報 | 書き始めると止まる | 整える情報を一覧にできる |
| 第4章 | 書いたあとの見直し | 書いたが、これでよいか不安 | 3つの視点で見直せる |
| おわりに | 次の小さな一歩 | 読み終えて、何をするか迷う | 今日やることを一つ決められる |
この表のように、「読者の状態」の列を作っておくと、各章がどこで必要になるのかが見えます。読者の状態が前の章と同じなら、その二つの章は、一つにまとめられるかもしれません。
章の中の組み立て方
章立てが決まったら、一つの章の中も、同じように迷いの順で並べます。私は、次のような流れをよく使います。
- 読者の疑問を一文で置く
- 結論を先に言う
- 理由や、調べた事実を書く
- 自分の考えを、事実と分けて書く
- 読者が試せる小さな手順を示す
- 次の章へのつなぎを一文で書く
すべての章をこの形にそろえる必要はありません。ただ、「いま自分は、この章のどこを書いているのか」が分かるだけで、書く手が止まりにくくなります。
見出しの付け方
見出しは、本文の要約ではなく、読者の疑問に答える言葉にすると、読みやすくなります。
| 見出しの例(仮) | 気をつけたいこと |
|---|---|
| 「はじめに」だけ | 何が書いてあるか分からない。目的が分かる言葉を足す |
| 「〜の基礎知識」 | 範囲が広すぎる。何が分かるのかを具体的にする |
| 「〜するための3つの視点」 | 読者が得るものが見える。数は本文と合わせる |
数字を入れるなら、本文でも同じ数になっているかを必ず確かめます。「5つ」と書いて4つしかない、といったずれは、読者の信頼を損ねます。
「はじめに」と「おわりに」に置くもの
本の入口と出口の文章にも、役割があります。
- はじめに:誰のための本か、読むと何が分かるか、どう読めばよいか
- おわりに:本の要点を振り返り、読者が次にできる小さな一歩を示す
誇張した約束や、効果の保証は書かないようにします。「必ず成果が出る」のような言い方は、読者に過度な期待を持たせてしまいます。
奥付や参考情報に入れるもの
本の最後には、発行者や著者の情報、参考にした資料の情報などを置きます。本文や奥付にURLを載せるときは、リンクにしておくと、読者が迷わず移動できます。参考にした資料は、原典の内容と、自分の見解が別のものだと分かるように書き分けます。著者情報の書き方は、著者プロフィールの書き方で整理しています。
よくある失敗と対策
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 書きたいことを、思いついた順に並べる | 読者の迷いの順に並べ直す |
| 章が多すぎて、全体が見えない | 大きなまとまりで束ね、章の数を絞る |
| 章の中に約束が複数ある | 一つの章に、約束を一つにする |
| 見出しが抽象的で、中身が分からない | 読者の疑問に答える言葉にする |
| 本文を書いてから、目次を作る | 先に目次を作り、本文を書きながら見直す |
| 見出しの数と本文の数が合わない | 完成前に、数字の整合を確認する |
確認チェックリスト
- 読者の迷いを、書き出したか
- 章の順番が、読者の経験する順になっているか
- 各章の約束を、一文で言えるか
- 章の数と長さを、読者が負担なく読める範囲にしたか
- 目次だけを読んで、流れを確かめたか
- 見出しの数字が、本文と合っているか
- 本文や奥付のURLを、リンクにしたか
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よくある質問
章は何個くらいが適切ですか?
決まった数はありません。読者が迷う順番に並べて、約束が一つずつ言える範囲で決めてください。多くなりすぎる場合は、大きなまとまりで束ねる方法があります。
目次は、本文を書く前に作るべきですか?
先に作ることをおすすめします。ただ、本文を書き進めるうちに、順番や内容を直したくなることはよくあります。目次は一度作って終わりではなく、書きながら見直すものだと私は考えています。
一つの章が長くなってしまいます。どうすればよいですか?
小見出しで区切るか、約束が複数あるなら章を分けることを検討してください。スマホで読む人にとって、途中で戻りやすいことも大切です。
目次から本文へ移動できるようにするには?
制作の方法や配信の設定によって、できることが変わります。使う制作の方法の案内や、配信先の公式ヘルプで、最新の方法を確認してください。
まとめ
- 章立ては、読者が迷う順番に並べる
- 迷いを書き出し、まとめ、一本の流れにする
- 各章の約束を一文で書き、一章に約束を一つにする
- 目次だけを読んで、流れと数字の整合を確かめる
- 目次は、書きながら見直してよい
まず、読者が迷いそうなことを、付箋に十個だけ書き出してみてください。