出版の進め方:企画する
電子書籍の企画の立て方:誰に何を伝える本にするかを決める7ステップ
電子書籍を出したい。そう思っても、「書きたいことがありすぎてまとまらない」「何から決めればいいのか分からない」と、手が止まることがあります。
結論から言うと、電子書籍の企画は、書き始める前に次の4つを一文ずつ言葉にしておくと、あとの作業が大きくぶれにくくなります。
- 目的:出版したあと、何を起こしたいか
- 読者:どんな場面にいる人に届けたいか
- 約束:読み終えた人が、何を分かり、何を試せるようになるか
- 範囲:この一冊に入れる話と、入れない話
この記事では、この4つを決めるための7つのステップと、企画シート、よくある失敗、確認チェックリストをまとめました。自分の仕事や店、サービスを知ってもらうために本を出したい、個人事業主や中小企業のオーナーの方を想定して書いています。
出版全体の流れは、電子書籍の出版方法:個人が出すまでの全体像で整理しています。この記事は、その「企画する」の部分を、もう一段くわしく掘り下げた内容です。
なぜ、書く前に企画を決めるのか
企画が決まっていないまま書き始めると、書きながら「これも入れたい」「あれも必要かもしれない」と話が広がり、途中で手が止まりやすくなります。原稿が仕上がっても、誰に向けた本なのかが分かりにくくなることもあります。
電子書籍は、書店で手に取って中を見てもらうのではなく、タイトル、表紙、紹介文といった限られた情報から選ばれます。だから、企画の段階で「誰の、どんな疑問に答える本か」が決まっているほど、タイトルも紹介文も書きやすくなります。
もう一つ、企画は「本の外」ともつながっています。本を出す目的が、問い合わせなのか、ブログを読んでもらうことなのか、自分の考え方を知ってもらうことなのか。それが決まっていれば、本の最後に何を置くかも決められます。
私は、企画を「正解を当てる作業」ではなく、「迷ったときに戻れる場所をつくる作業」だと考えています。完璧でなくても、一文ずつ書いておくだけで、途中で迷ったときの基準になります。
電子書籍の企画の立て方:7つのステップ
ステップ1 出版の目的を、一言で決める
最初に決めるのは、「本を出したあと、何が起きていてほしいか」です。たとえば、次のような目的が考えられます。
- 自分の仕事の考え方を、初めて知る人に伝えたい
- 問い合わせの前に、読んでもらえる説明を用意したい
- ブログやメルマガで発信しているテーマを、一冊にまとめたい
目的は、一つか二つに絞ります。多すぎると、本の中身が散らばります。
なお、「売れること」や「評価されること」だけを目的にすると、自分で確かめられる作業が見えにくくなります。「説明を整理して残す」のように、自分で確認できる目的から置いてみるのも、一つの選択肢です。
ステップ2 読者を「場面」で絞る
読者は、年齢や職業だけでなく、「いま、どんな場面にいる人か」で考えると、具体的になります。
たとえば、「初めてホームページを作ろうとして、何から手をつけるか迷っている、小さなお店のオーナー」。これは架空の例ですが、年齢や性別を決めるより、読む人の姿が浮かびます。
「誰にでも役立つ本」にしようとすると、結局、誰にも「自分のための本だ」と思ってもらえないことがあります。読者を絞るのは、ほかの人を締め出すためではなく、「最初の一人」を決めるためです。
ステップ3 読者の疑問を書き出す
読者の場面が決まったら、その人が抱えていそうな疑問を、思いつく限り書き出します。
- 何から始めればいいのか
- どこまで自分でやればいいのか
- 失敗しやすいのはどこか
- 終わったあと、何を確かめればいいのか
実際に聞かれたことがあれば、それが一番の材料です。まだなければ、自分がその分野に初めて触れたときに迷ったことを思い出してみてください。ただし、実際にはなかった質問や相談を作って書くことは、避けましょう。読者との信頼に関わります。
ステップ4 「約束」を一文にする
書き出した疑問のうち、この本で答えるものを選び、「この本を読むと、〇〇が分かる」という一文にします。これが、本の約束です。
ここで、効果を保証する書き方は避けます。「売上が上がる」ではなく、「自分の案内文に必要な情報を点検できる」のように、本文で実際に扱う作業として書きます。約束が現実的であるほど、読んだ人との間のずれが小さくなります。
ステップ5 一冊の範囲を決める
次に、この一冊に入れる話と、入れない話を分けます。
- 入れる話:約束に直接答える話
- 別に書く話:大切だが、別の本や記事で扱う話
- 扱わない話:この本の読者には必要のない話
「入れない」は、「大事ではない」という意味ではありません。置き場所を変えるだけです。範囲を絞ると、一つの疑問を、読者が自分の場合に当てはめて考えられるところまで掘り下げられます。範囲の広さと、説明の深さは別のものだからです。
ステップ6 仮の目次を作る
範囲が決まったら、章のタイトルと、各章で答える疑問を並べます。このとき、書き手が仕事を進める順番ではなく、読む人が理解しやすい順番で並べてみてください。
たとえば、作業は「準備→実施→確認」の順に進むとしても、読む人が最初に知りたいのは「頼めること・頼めないこと」かもしれません。
目次は、書き始めてから変えて構いません。いまの考えを置いておく「仮の棚」として、まず並べてみます。並べたら、章と章の間に「なぜ、その次にこの話なのか」と問いかけてみましょう。理由が言えない場所は、順番を入れ替えるか、つなぎの説明を足す候補です。
ステップ7 タイトルと紹介文の仮案を書く
最後に、タイトルと紹介文の仮案を書きます。完成形でなくて構いません。
タイトルには、読者が探しそうな言葉と、本の約束が分かる言葉を入れます。紹介文には、誰に向けた本か、何が分かるか、そして何を扱わないかを書きます。扱わないことを書いておくと、読む前の期待と中身のずれを減らせます。
仮案を書いてみて、書きにくいところがあれば、ステップ2〜5のどこかが曖昧なサインです。そこへ戻って整えます。
企画シート(書き方の例つき)
ここまでの内容を、一枚に整理するための企画シートです。例は、すべて架空です。
| 項目 | 書くこと | 書き方の例(架空) |
|---|---|---|
| 目的 | 出版後に起きてほしいこと | 自分の仕事の考え方を、初めて知る人に伝える |
| 読者 | いま、どんな場面にいる人か | 初めてホームページを作る、小さなお店のオーナー |
| 読者の疑問 | 読者が迷いそうなこと(3〜5個) | 何から始める? どこまで自分でやる? |
| 約束 | 読むと何が分かるか(一文) | 自分の案内文に必要な情報を点検できる |
| 範囲 | 入れる話/別に書く話/扱わない話 | 入れる:案内文の作り方 扱わない:広告の運用 |
| 仮タイトル | 読者が探す言葉+本の約束 | 初めてのお店の案内文:必要な情報を点検する本 |
| その先 | 読み終えた人に、次にしてほしいこと | サイトを見る、相談する、など |
よくある失敗と、見直す問い
| よくある失敗 | 起きやすいこと | 見直す問い |
|---|---|---|
| 読者が「みんな」になっている | 誰にも響かない紹介文になる | 最初の一人は、どんな場面にいるか |
| 約束が大きすぎる | 本文で答え切れない | 本文で実際に扱える作業は何か |
| 入れたい話が多すぎる | 説明が薄くなる、書き終わらない | 一つの疑問を、深く書けているか |
| 自分の仕事の順番で並べる | 読む人が途中で迷う | 読む人は、最初に何を知りたいか |
| 出版の目的がない | 本の最後の導線が作れない | 読み終えた人に、どうしてほしいか |
企画の確認チェックリスト
書き始める前に、次の項目を確認してみてください。
- 出版の目的を、一文で書けた
- 読者を、年齢ではなく「場面」で説明できる
- 読者の疑問を書き出し、この本で答えるものを選んだ
- 約束が、効果の保証になっていない
- 入れない話を決めている
- 目次の章ごとに、答える疑問を書ける
- タイトルと紹介文の仮案を書けた
- 実際にはなかった体験談や読者の声を、材料にしていない
企画が決まったあとは
企画が決まったら、構成と原稿づくり、表紙、KDPでの登録へ進みます。全体の流れは電子書籍の出版方法に、登録の手順はKDP登録手順に、かかる費用は電子書籍の出版費用にまとめています。
原稿の進め方は電子書籍の原稿の書き方で、価格の考え方は電子書籍の価格の決め方で、本に載せる著者紹介は著者プロフィールの書き方で整理しています。
出版したあとに読者へ届ける考え方は出版後の発信で、口コミや評判との向き合い方は口コミと評判で解説しています。
よくある質問
電子書籍の企画は、どこまで書けばよいですか?
決まりはありません。企画の段階では、目的・読者・約束・範囲を一文ずつ書ければ十分です。文章量を増やすことより、読者の疑問に答えられる範囲を決めることを優先してください。
読者を絞ると、読んでもらえる人が減りませんか?
減る可能性はあります。ただ、読者が「自分のための本だ」と感じる紹介文を書けるのは、読者を絞れているときです。最初の一冊では「最初の一人」を決め、広げたい話は、別の本や記事に回すこともできます。
自分の仕事には、当たり前のことしかないのですが、本になりますか?
自分には当たり前でも、初めて知る人には説明が必要なことがあります。本になるかどうかは、読者の疑問に答える形で整理できるかで考えられます。まずは、ステップ3の疑問の書き出しから試してみてください。
企画の段階から、プロに相談してもよいですか?
はい。企画、構成、編集、表紙、登録、公開後の発信まで、必要な部分だけを相談することもできます。ご相談・お問い合わせからご連絡ください。
まとめ:企画は、迷ったときに戻れる場所
電子書籍の企画は、目的・読者・約束・範囲を、一文ずつ言葉にすることから始まります。7つのステップで、その土台を作れます。
完璧に決めなくて構いません。書きながら変わることもあります。ただ、戻れる場所があると、書く手は止まりにくくなります。
いま、あなたの本を最初に手に取ってほしい人は、どんな場面にいる人でしょうか。まずは、その人を一文で書いてみてください。